『アルゼンチンで、競馬。 ’97』 @ A B C 成績表 おまけ
大レースを見た興奮の余韻と、応援する馬が負けたという、いつもの複雑な感傷に浸りながら、スタンドの裏手に回り、馬が戻ってくるのを待つことにする。
2着のクワリブラーボ、5着のジムワキ、12着のスレイマンとも泥だらけ。
「いやホントに疲れたよ」といった様子だ。
しばらくして、優勝馬のチュージョが帰って来た。
テレビカメラに囲まれながら厩舎に向かっていくチュージョを、子供たちが追いかけてゆく。
ラストチャンスと思い、小生も慌ててカメラを構えながら追いかけたが、走りながら写真を撮るのは大変だ。
メチャメチャにシャッターを切っているうちに、フィルムも終わり、チュージョが建物の奥に引っ込んだ。
さよならチュージョ。
…なんて思っていたら、ファンらしい何人かがその後をぞろぞろと付いていっている。
小生も行ってみたら、そこで出走馬全頭がレース終了後の引き運動と水洗いをやっていた。
何のことはない、慌てなくてもここでゆっくり馬の写真が間近で撮れたのである。
(くっそ〜フィルムがない!)
それにしても、ここの競馬場は、こんな所まで一般のファンが見物できるのかと思うと、改めて「いい競馬場だなあ」と感心してしまうのであった。
そして初の国外遠征で好成績を収めたクワリブラーボの厩務員が終始ニコニコしていたのが、とても印象的だった。
……
しかし、サンパウロの馬がブエノスアイレスの馬に負けるというのは、サッカーのブラジル代表がアルゼンチン代表に負けるようなもので、ブラジル滞在中の小生にとっては甚だ面白くない。
話は前後するが、去る(98年)3月4日、同じサン・イシドロ競馬場で「ラテンアメリカ・ジョッキークラブ協会大賞」(GT・芝2000m、3歳以上)(注:雑誌等では「南米競馬機構大賞」と訳されているようです)という国際レースがあった。
小生、本当はこれも見に行きたかったのだが、お金と仕事の都合で断念せざるを得なかった。
するとまあ、このレースでは、再度挑戦したジムワキが見事アルゼンチン馬に借りを返す勝利を収め、溜飲が下がる思いがしたものだ。
とはいえ、小生が馬券を買っていない時に限って1着されるというのは、これはこれでまたしゃくに障るのである。
……
さて、スタンドに戻り、コーラで軽くノドを潤しながら、再び場内をウロつくことにした。
嬉しいのは、スタンド内に「サン・イシドロ競馬場グッズコーナー」があること。
見つけた途端、グッズ好きの小生、大喜びで店内に入り、Tシャツ3枚(1枚15ペソ)と競馬ビデオ2本(1本25ペソ)とアクセサリー1つ(1個16ペソ)を購入した。
しめて111ペソ也、である。
しかし、サンパウロに帰って来てわかったのだが、困ったことにこのビデオテープ、自分の持っているビデオデッキではまったく映らないのである。
……
やがてレースが終わり、駅に戻る。
ホームには結構人がいる。
競馬帰りの人も多いようである。
……
いいものを見た、いいものを買った、とホクホクしながら乗った帰りの列車の車中。
夕暮れのブエノスアイレスの風景をぼんやりと眺めていたら、終点に近づいた右手の車窓に突如競馬場の全景が浮かび上がった。
ハッと目を凝らして見ると、どうやら芝はなくダートコースだけのようである。
地図を読んであらかじめ頭に入れておいた市内の位置関係から判断して、「これがパレルモ競馬場(別名アルヘンティーノ競馬場)かあ」と理解するのに時間はかからなかった。
思わず「み〜ぎに〜見えるけ〜ばじょお〜」なんてメロディーが頭をよぎりながら、あれ、オレ昔ユーミンは嫌いだとか言ってなかったっけ、などと悩んでいるうちに、列車はレティーロ駅のホームにすべり込んでいた。