1995-1999 ブラジル サンパウロで、競馬。【HOMEへ】

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『アルゼンチンで、競馬。 ’97』 @ A B C 成績表 おまけ


『アルゼンチンで、競馬。 ’97』 A

 時間は午後5時25分。

 緑の深い厩舎村から、調教師、厩務員ら関係者に付き添われ、13頭がゆったりと姿を現した。

 今回の「カルロス・ペレグリーニ国際大賞」は珍しいことに、外国からの出走はブラジル馬だけ、しかもその3頭ともサンパウロ所属馬である。
 3頭ともに、国外での出走は初めての経験だ。

 GTレース3勝の実績を持つ王者ジムワキが珍しくイラついて、やたらと前脚で地面を掻くしぐさを見せる。
 厩務員がしきりになだめようとするが、落ち着かない。

 サンパウロの3冠馬、白い疾風クワリブラーボも、やはり微妙にイラつきを見せリラックスができない。

 サンパウロのもう1頭、逃亡者スレイマンはいつものごとく「な〜に?」という感じのトボけた表情だ。

 一方のアルゼンチン勢はやはり地元だけあって、どの馬も堂々としている。

 馬はもともと常に肉食動物からの危険にさらされていたため、人間以上に環境の変化に敏感だと聞く。
 「う〜ん…勝ち目ないかな?」
と思いながらも、サンパウロの3頭に単勝20、20、10ペソの応援馬券をそれぞれ買うことにする。
 もし今回はだめでも、いつもと違った環境で競馬をするのは、今後の馬のステップアップのためにはそれぞれ良い経験になるはずだから。

 ……

 午後6時を過ぎたあたりから、ぼつぼつと各馬が引き運動を開始。

 6時35分ころ、スタンド前のパドックに移動。

 そのあと本場場に入場し、返し馬をしながら向こう正面右奥のスタート地点に向かう。
 スタート位置は引き込み線になっていて、スタンドから見ることはほとんどできない。

 当レースは、スタート地点から3コーナーまでがほぼ1100メートルの直線になっていて、そこからゆるやかなカーブを曲がり、4コーナーからゴールまでは再び600メートル余りの直線になっている。
 かなり広い。
 これなら馬の能力も思う存分発揮できるだろう。

 ……

 定刻から15分ほど遅れた午後7時5分、
 「グラン・プレーミオ・カルロス・ペレグリーニ」
 晴れやかに場内アナウンスがスタンドにこだました。

 ゲートが開いた。

 最後の直線を目の前で見ようとコースの柵に陣取った小生だが、電光掲示板がじゃまになって向こう正面が良く見えない。

 気がつくと、逃げ馬のはずのスレイマンが3番手を走っている。
 ハナを奪えなくては、この馬の競馬はできない。

 ほぼ真っ白の馬体を持つクワリブラーボが中段後方を追走している。

 ジムワキはどこへ行った?

 あっという間に4コーナーを回り、馬群がゴールを目指して駆け上がってくる。

 抜け出したのは1番人気の地元馬チュージョだ。

 懸命に追走する2番手集団の最内で、ジムワキが伸びきれずにもがいている。

 その間をぬって、クワリブラーボが2番手集団を鋭く割って出た。
 しかし先頭からはすでに4、5馬身差。
 もう届かない…。

 ゴールを過ぎ、騎手が馬を追うのをやめ、それぞれの馬が走りを終えて散ってゆく。

 ふと観客の歓声に気がついて振り返ると、スタンドは満員で人があふれそうだった。

 ゴール前の会員席からは、優勝馬を称える声がいつまでも響いていた。(成績表はこちら→)


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