『アルゼンチンで、競馬。 ’97』 @ A B C 成績表 おまけ
1997年12月13日、サン・イシドロ競馬場で開催された「’97カルロス・ペレグリーニ国際大賞」の観戦記です。
当時、小生はサンパウロ滞在中でしたが、このレースだけはどうしても見に行きたくなり、むりやり仕事の休みを取ってブエノスアイレスまで行きました。その時の記録です。
本稿はサンパウロで発行されている日本語の月刊情報誌『オーパ!』に掲載予定だったのですが、同誌が発行元変更に伴い『ブンバ!』誌としてリニューアルされたため、1ヶ月休刊となり、そのためボツになった原稿です。
以後、10年近くも小生のFDに眠らせていましたが、ここで公開してみました。
去年の12月、ブエノスアイレスに飛んだ。
わざわざ350米ドルの往復航空券を買って、競馬を見に行ったのだ。
と、いうのは、小生の地元(あえて「地元」と呼ばせてもらう)であるサンパウロの優駿クワリブラーボとジムワキが、「南米の凱旋門賞」と異名を持つ、あの「カルロス・ペレグリーニ国際大賞」(GT・芝2400m・3歳以上)で走るからだ。
これを見ないで、いったい何をしに南米まできたというのだ。
とりあえず航空券と着替えとわずかな馬券購入資金を手に、いそいそと機中の人となった。
―― これはスペイン語も解さず、アルゼンチンの情報もまったくなかった小生の、「アルゼンチン競馬場訪問記」である。
レース当日の13日土曜日。ブエノスアイレス市の郊外へと伸びる鉄道ターミナルの一つ、国鉄レティーロ駅に向かう。
小生が宿を取るサン・マルティン広場近くのホテル(3ツ星で1泊50ドル)からは、歩いて7、8分の距離だ。
ヨーロッパ風のしゃれた造りの駅舎から、列車は行楽地である終点ティグレ市へ向けてのんびりと出発する。
車内の雰囲気は、日本の地方都市間を結ぶJRの各駅停車とさほど変わらない。
1000万人の人口を抱える大首都圏だけあって、住宅街風の町並みがいつまでも続く。
やがて緑も多くなり、30分ほどで競馬場のある町、サン・イシドロに停車する。
レティーロからサン・イシドロまでの乗車料金は片道0.47ペソ(注:当時は1米ドル=1ペソの固定レート制)と安く、往復切符を買うともっと割安になる。
実は小生、競馬場の位置も行きかたもまったく知らずに来たのだが、競馬ファンらしきおじさんたちがいたのでついて行ってみたら、駅から競馬場入口まではわずか歩いて5分程度の近さだった。
やはり国や土地を問わず、競馬ファンというものは雰囲気でわかってしまうものである。
入口の門をくぐると、中は公園のような雰囲気で木々にあふれており、そこには20人乗りくらいの無料マイクロバスが止まっている。
3分ほどこれに乗ると、いよいよ「カルロス・ペレグリーニ国際大賞」の開かれるサン・イシドロ競馬場スタンドに到着である。
入場料は1ドル。
改札をくぐり、ひとまずコースを見てみることにする。
4コーナー付近からゴール地点の方向を見ると、直線が緩やかな上り勾配の坂になっているのがわかる。
次に、スタンド裏をゴール方向に歩いてゆくと、さらに改札があった。
ここでまた1ドル払って中に入る。そうすると、よりゴールに近い位置のスタンドに入ることができる、という構造であった。
なおゴール前のスタンドはおそらく会員席なのだろう、一般の人は入ることができない。
この、2つめの改札を入場して驚いたのは、次のレースとその次のレースに出走する馬の待機馬房が間近で見学できちゃうことである。
レースの始まる1時間以上も前からお目当ての馬をじっくりと観察できるなんて、ここのファンはなんて幸せなんだろう、と思った。
レースに出走する馬は、待機馬房を出たあと、しばらく引き運動をする。
柵越えにボンヤリとその風景を眺めていたら、隣にいたおじさんが小生に何か話しかけてきた。
よく聞いてみると、「おい、見なよ。あの厩務員はセニョリータだぜ」。
なるほど、3号馬を引いているのは若くてきれいな女性だ。
面白いのでシャッターを切り、おじさんと笑顔の交換をする。スペイン語ができないのは残念だが、これもインテルカンビオ(国際交流)である。
さて、馬券の買い方だが、基本的には日本の発売窓口と同じ。
馬券売り場で係員に「単勝、〇番、△ペソ」「連勝複式、◎−×番、◇ペソ」と言えば、発券してくれる。
話すのが面倒ならば、紙に書いて渡してもいい。
馬券の種類は単勝、連勝複式のほか、複勝、連勝単式、3連勝単式、4連勝単式もある。このほかにも馬券の種類がいろいろとあるようなので、スペイン語のできる人はチャレンジしてみてください。
レースの情報は『LA NACION』などの日刊紙や、専門雑誌『REVISTA PALERMO』などで得ることができる。
一般レースを2つほどちょろちょろ遊んだあと、望遠レンズつきの一眼レフカメラを首にぶら下げてボケ〜ッとベンチに座っていたら、白人のおじさんから
「…ほうキャノンのカメラか。北米から来た人かね?」
と声を掛けられた。
小生はもちろん黄色人種で、「北米人」と言われたのは初めての経験である。
「いや、小生は日本人である。競馬雑誌の取材で当地に来ている」
などといーかげんなウソを答えたら、
「それは、北米の雑誌かね?」
と再び聞いてきた。
たぶん、極東から日本人がわざわざアルゼンチンまで競馬を見に来るなんて、この人にはイメージが沸かなかったのだろう。
さてお待ちかね、メーンレース「カルロス・ペレグリーニ国際大賞」全出走馬の、待機馬房への登場である。